夢と現実

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「セロリは入ってないから安心して?」 なんて恭の言葉に少しだけ口を尖らせて。 「ちょっとくらいは」 「食べれるの?」 「……多分」 なんて返事に恭はクスリと笑う。 いつもの会話にいつのも態度、 席だって隣じゃなくて向かい合わせ。 少し前までと変わらない距離。 その距離に居心地の悪さすら感じる。 「……ねぇ、恭」 「あぁ、そうだ」 先に恭に主導権を奪われて。 「これから、柊とちょっと待ち合わせだから」 「えっ?」 驚く詩織に恭は少しすまなそうにふんわり笑う。 「井上さんに連絡して一人で帰れるよね?」 帰れる。 帰れるけど―― 「恭は?」 「地下鉄で移動するよ」 「そんなっ、あたし予定ないし待ち合わせ場所まで一緒に――」 行けばいい。 だって、もしかしたら……。 「地下鉄のほうが早いんだ」 そう言われると返す言葉は見つからなくて。 「ほら、冷めないうちに食べよう?」 その声に「……うん」と頷いてオムレツにフォークを入れた。
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