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チェシャ猫が笑っている。
私にしか見えないそいつはゲラゲラとお腹を抱えながら、顔の半分をこえているのではないかというくらい大きな口を開けて、やかましく笑っている。
「うるさい!」
枕を投げつけると、そいつは口と笑い声だけ残して消えていった。
おい、もしかしてこれはまずい状況なのではないか?
私は8月のカレンダーをみつめた。
A3サイズの上半分はヒマワリの鮮やかな黄色で埋めつくされており、下半分に日付が印刷されている。日付の下には予定を書きこめるようにと余白があるのだが、そこには予定ではなく数字を書いた。
サインペンで小さく書いた数字は、先月は問題なく40前後だった。しかし、ここ数日は徐々に数が小さくなっている。
由々しき事態である。これはなにかしらの対策をこうじるべきだ。
なにかしらの対策というのは夏休みの宿題を早めに片づけてしまおうとか、そういうことではない。まあ、宿題が終わっていないのは事実なのだが、問題はそこではない。
つまり、彼氏をつくったり、彼氏をつくったり、彼氏をつくったりする必要があるということだ。
私の名誉のために言わせてもらうが、これは決して彼氏がいたら隣町のイオンモールで一緒にお買い物をしたり、学校での昼休みを一緒にお弁当を食べたり、そういう甘い想像をしているわけではない。
断じて違う。これは女同士のプライドをかけた決闘なのだ。
奈良崎 絵理。あの女にだけは、あの女にだけは、負けるわけにはいかないのである。
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