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 最初は、いやいやそんなはずはないと聞き流していた。あんなにも人とコミュニケーションをとるのが苦手なやつが、彼氏なんてできるわけがないと。  ところが、絵里が男性となかむつまじく歩いているのを見たという目撃証言や、なにやら複数の男性と語り合っているという噂がいくつかでてきた。  これはもしや、本当に彼氏というものがいるのではないかと疑惑が浮上し、それとなく本人にきいてみたところ――― 「彼氏? ふむ、恋愛関係にある異性のことだな。該当する人物はいることは、いる。」  なんともまどろっこしい返答がきた。しかも、銀ブチの眼鏡をくいっと直しながらである。  まあ、それはいいとして、絵里に彼氏がいる。その事実が私の対抗心に火をつけた。  これは負けていられない。なにがなんでも、彼氏を見つけなくては。  絵里のほうが先に彼氏ができたからといって、私が彼女に劣っているというわけではない。  なにを隠そう、彼女は私より一年ほど先に生まれてきている。つまり、彼女に勝つためには彼女の年齢より前に彼氏ができればいい。  4ヶ月前。まだ小学生だった私は、中学に入ればきっと素敵な出会いがあるはずだと信じていた。  そう。信じて、いたのだ。淡い夢を。  私は中学校に入学した4月から、567と指を折った。そして、8月。  今日までの4ヶ月。私は一体、なにをしていたのだろう。  そもそもの原因は、絵里に似ていることにある。つまりは、私も人とコミュニケーションをとるのが苦手な人間なのだ。  
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