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突然剣を納め、3人から背を向けて歩き出した。
突然のことで3人からは戸惑っている。
敵意を見せたと追えば、身を翻して剣を納めてしまう。
けれど、別の所から殺気の様なものを感じる。
殺気では無いのだろうけれど、それと近い物だ。
「何時まで手間取っている」
「だって、面白そうな馬鹿なんだもの」
クスクス笑えば、後ろから『何ですってっ!』と言う声が上がった。
けれどリオはそれに耳を貸すことはない。
聞いたとしても、聞かなかった事にする。
それが彼女のやり方だ。
「フン。お前が手間を掛けるほどか?」
「いーえ。ちょっと小手調べ程度うかな」
「それで」
「え」
キョトンとした顔で彼を見る。
彼は呆れた顔で、続きを待っている。
嗚呼、小手調べのことか、と理解するまで数秒は掛かった。
その数秒は彼にとって大した時間だろう。
「ご賞味あれ、って言う程でも無いわ」
それだけ言うと、彼より後ろへと下がった。
直接下した方が僅かな時間で済むだろう。
何より一度交えてみれば解る、と思ったからだ。
強くはないけれど、弱くもない。
そんな表現を出せば、更に彼を呆れさせるに違いない。
だから敢えて口にしなかった。
そして何より、直感で彼の持っている年代物の剣が関係していると思ったからだ。
そうこう思っているうちに、粗方締め上げが終わっていた。
「不満そうね」
「当たり前だ。こんな奴らに後れを取るなどあり得ない」
「……それもそうね」
煮え切れない声だった。
それは言った自分でも驚いた。
リオは首を振った。
自分でも如何してそんな声色が出たのか謎だった。
「後は連行すれば良いの?」
「あ、嗚呼」
「じゃあ、後ろを見はるわ」
「……リオ」
「何?」
「……いや、何でも無い」
首を傾げる。
何を言いたかったのだろう。
もしかしなくとも、言葉にしたところで無意味の様な気がした。
言わなかったとしても、言いたいことは解っている様な気がした。
「ねぇ、リオン」
「なんだ」
「……さっきから、頭痛が治まらないの……モンスターが出ても、対応しきれないかも」
苦笑したリオからは、冗談には感じなかった。
だとすれば、事実なのだろう。
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