はじまりの記憶

11/14
前へ
/40ページ
次へ
 リオンは深くため息を吐き出してから、少しだけ呆れた様な安堵の様な表情をした。 「安心しろ、大した距離は歩くまい」 「ん」 苦笑しながら縛られている3人を見た。 ぶつくさ文句を言っているようだが、盗んだのだから仕方が無い。 盗まなきゃ良いのにーと、思っていた。 「ねぇ、リオン。金髪の彼、ちゃんと腕を磨けばいい筋だと思わない?」 「……興味はないね」 「言うと思った。明解な事を言わないところを見ると、脈はありかな」 「リオッ!!」 頭に手をやりながら笑う。 穏やかに波打つように来る、頭痛は厄介と言えば厄介だ。 早く治れば良いのに、と思いながら盗人を連行して行く最後尾を歩く。 ちゃんと歩いていたはずなのに、だんだん視界がぼやけてくる。 嗚呼、貧血かしら?と思った瞬間、目の前は真っ白になり意識を失った。  ***  気がついたら、見覚えのある部屋にいた。 自分に与えられた部屋ではなく、彼の私室だった。 どうして自分の部屋に連れて行かなかったんだろう、と疑問にも思った。 後でたっぷり小言を言われるのだろうと、溜息を零した。 「気が付きましたか、リオ様」 「……マリアンさん?」 「はい。具合はどうですか?」 すこぶる良いとは言えない。 まだ頭の奥で鈍痛の様な頭痛がある、気がする。 けれど、遠征している時の様な痛みはない。 「ごめん、何か呑みたい」 「解ったわ。すぐ持って来るから、大人しく待っていて」 「………うん」 砕けた口調で言い、と自分からお願いした。 しかも彼の部屋にいる時だけでも良いからと。 彼女は困った顔をしたが、彼の一言でそれを承諾した。  寝ていた時に夢を見た様な気がした。 どんな夢なのかは覚えていないけれど、心地よかった気がする。 何かに守られていた様な、そんな気分だった。 『待って、今起きたところだから!』 『起きているなら、先に報告しろと…』 『まだ、彼女は快調じゃないわ』 ドアの方から聞こえて来た。 きっとリオンと先程飲み物を取って来ると言ったマリアンだろう。 口論の内容なんてどうでも良いから、入ってくればいいのに…と笑った。 マリアンの言う通り、まだ快調ではないようだ。 彼の声色からすれば、また何かあるのだろう。 しかも上からリオもつれて行くように言われたのだろうと、予想が付く。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加