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リオンは深くため息を吐き出してから、少しだけ呆れた様な安堵の様な表情をした。
「安心しろ、大した距離は歩くまい」
「ん」
苦笑しながら縛られている3人を見た。
ぶつくさ文句を言っているようだが、盗んだのだから仕方が無い。
盗まなきゃ良いのにーと、思っていた。
「ねぇ、リオン。金髪の彼、ちゃんと腕を磨けばいい筋だと思わない?」
「……興味はないね」
「言うと思った。明解な事を言わないところを見ると、脈はありかな」
「リオッ!!」
頭に手をやりながら笑う。
穏やかに波打つように来る、頭痛は厄介と言えば厄介だ。
早く治れば良いのに、と思いながら盗人を連行して行く最後尾を歩く。
ちゃんと歩いていたはずなのに、だんだん視界がぼやけてくる。
嗚呼、貧血かしら?と思った瞬間、目の前は真っ白になり意識を失った。
***
気がついたら、見覚えのある部屋にいた。
自分に与えられた部屋ではなく、彼の私室だった。
どうして自分の部屋に連れて行かなかったんだろう、と疑問にも思った。
後でたっぷり小言を言われるのだろうと、溜息を零した。
「気が付きましたか、リオ様」
「……マリアンさん?」
「はい。具合はどうですか?」
すこぶる良いとは言えない。
まだ頭の奥で鈍痛の様な頭痛がある、気がする。
けれど、遠征している時の様な痛みはない。
「ごめん、何か呑みたい」
「解ったわ。すぐ持って来るから、大人しく待っていて」
「………うん」
砕けた口調で言い、と自分からお願いした。
しかも彼の部屋にいる時だけでも良いからと。
彼女は困った顔をしたが、彼の一言でそれを承諾した。
寝ていた時に夢を見た様な気がした。
どんな夢なのかは覚えていないけれど、心地よかった気がする。
何かに守られていた様な、そんな気分だった。
『待って、今起きたところだから!』
『起きているなら、先に報告しろと…』
『まだ、彼女は快調じゃないわ』
ドアの方から聞こえて来た。
きっとリオンと先程飲み物を取って来ると言ったマリアンだろう。
口論の内容なんてどうでも良いから、入ってくればいいのに…と笑った。
マリアンの言う通り、まだ快調ではないようだ。
彼の声色からすれば、また何かあるのだろう。
しかも上からリオもつれて行くように言われたのだろうと、予想が付く。
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