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中世イギリスの時計台の上に、シルクハットと燕尾服、そしてステッキを持つ男がいた。
周りに蝙蝠を従えている。
男の周りには階段もない。
風も吹いていない。雲がだんだん周りになくなり月に照らされた男の姿は普通ではなかった。
耳がトンガリ、口元に小さな牙がのぞく。
マントがふわりふわりと揺れている。
男の名前はメフィストフェレス。
昼間は車椅子に乗ったみすぼらしい老人の姿になる。
だからこの界隈では不審者だと思われない。
塔から静かに舞い降りる。
そして必ず橋の下に降りる。
人を伺うように周りを見回し、近くにいるジプシー女に目をつける
「はじめまして。お嬢さん。キレイな満月の美しい夜にあなたのような女性に会いました。私といいことしませんか」
「まあ。結構品のある燕尾服ですね。お金持ちの紳士が私を買ってくれるなんて。」
女性をエスコートして人通りのない道に入っていった。
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