56人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
藤一(ふじはじめ)と席が隣になって、約一ヶ月。
彼と話すのはなかなか楽しかったり、うざったかったりする。
黒いさらっとした髪。
羨ましい限りの卵肌。
くったりと力の抜けそうな、ゆるーい笑顔。
見た目的にはなくもない感じといったところなのに、この彼女欲しがり加減はなんなんだろうといつも思う。
というかその慢性的に口をついて出る「彼女ほしーなー」が間違いなく弊害になっているよと思う。
「……ねえ、鴻野」
「なんですか」
「幸せってどこにある」
あと、こういうよくわからない質問を突如ぶん投げてくるところとか。
つまり中身がダメなんだ。
そうだ、悪いのは中身だ。
……ダメじゃん、藤くん。
「どっかにあるってものじゃないでしょう」
「でも確実にある場所があるよ」
「どこ」
「恋人の目の中に」
はい、アウト。
「藤くんの彼女にはなりたくないかも」
「え、なんで」
「めくるめく君の瞳にカンパイ的ワールドが広がりそう」
「素敵じゃん」
藤くんはへらっと無気力に笑う。
本当はそんな君がめくるめく君の瞳にカンパイワールドを繰り広げるところなんか、全く想像がつかないのだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!