時を止めて

5/5
前へ
/7ページ
次へ
熟睡している朽木には聞こえないのは織り込み済み。 好きだった。 名前なんて付けたくない関係だったから。 初めての浮気だったし、罪悪感が気持ちよかった。 楽しんでいた部分もある。 でも終わりはいずれ来るもんだよ。 今でも罪悪感で縛られている私は、朽木を選べない。 「責任取って」なんて言えない。 朽木の髪をゆっくりと撫でる。 今、この瞬間で時が止まればいいのに。 本当にそう願うのにな。 叶わない。 現実に目を向けなければ、私はまた取り返しの付かないことになる。 どっちが?なんてわからないけど。 時期を考えるとさぁ。 なんで長期出張なんて行ったのよ? 責任転嫁もいいとこ。 全部私が悪いのだ。 私の弱さが招いたことなのだ。 それだけはわかるから。 「ゴメンネ」 私は何も言わず、朽木に会うときだけ付けているルージュを残して部屋を出た。 もう、会えない。 会っても他人だから。 名前を付けたかった関係。 棗がどう言うかなんてわからないけど、それでも私は朽木を選べなかった……。 end
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加