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熟睡している朽木には聞こえないのは織り込み済み。
好きだった。
名前なんて付けたくない関係だったから。
初めての浮気だったし、罪悪感が気持ちよかった。
楽しんでいた部分もある。
でも終わりはいずれ来るもんだよ。
今でも罪悪感で縛られている私は、朽木を選べない。
「責任取って」なんて言えない。
朽木の髪をゆっくりと撫でる。
今、この瞬間で時が止まればいいのに。
本当にそう願うのにな。
叶わない。
現実に目を向けなければ、私はまた取り返しの付かないことになる。
どっちが?なんてわからないけど。
時期を考えるとさぁ。
なんで長期出張なんて行ったのよ?
責任転嫁もいいとこ。
全部私が悪いのだ。
私の弱さが招いたことなのだ。
それだけはわかるから。
「ゴメンネ」
私は何も言わず、朽木に会うときだけ付けているルージュを残して部屋を出た。
もう、会えない。
会っても他人だから。
名前を付けたかった関係。
棗がどう言うかなんてわからないけど、それでも私は朽木を選べなかった……。
end
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