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さらに小一時間ほど馬を走らせたところで、ぼくたちの隊は指示された場所へ辿り着いた。そこにあったのはどこまでも続く巨大な穴だった。地面は丸く抉り摂られ、深部には闇が住んでいた。それ以外にはなにも無く、街も人々も動物も植物も消失していた。
「これを俺達の国がやったのか」と隣に居た同じ隊の兵士が呟いた。
ぼくは馬から降り、穴の周りを歩いた。穴の中に入っていく勇気はぼくには無かった。それはみんな同じようで、穴の周りにはエスタリアの兵士とラヒアの兵士、それにきっとこの辺りに住んでいるのであろうラヒアの住民が集まってきていた。
ラヒアの人々は、ぼくらよりも情報を持っていなかったのだろう。エスタリアの兵を見て驚きはしても、怒りや憎しみという感情を向けてくることは無かった。
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