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当たり前ではあるのだが、廊下を歩いているのは花と奏だけである。教室を出てしばらくは花は奏の腕をつかんだままだったが、思い出したかのように放して今は並んで歩いていた。
「……大丈夫? 歩ける?」
静寂に包まれる空気が嫌だからか、花が時折奏の顔を覗き込みながら声をかけてくる。仕切りにそう聞きたくなるほどに顔色が悪いのかと考えた奏は自らの頬に手を当てた。
「……大丈夫だと思う」
大丈夫か? と問われれば大丈夫な気がするが、どんどんと自信がなくなってくる。
保健室に向かう途中にある廊下の曲がり角に差し掛かった瞬間、視界の総てをノイズが支配して突然のことに驚き座り込んだ。
その瞬間、死角になっていた場所からたくさんのプリントを抱えて歩く教諭が現れる。奏が尻餅をついたために、花も足を止めたからぶつかることは無かったが「この時間帯に廊下に生徒がいるはずがない」と思っていた教諭は突然意識の中に入り込んできた二人に驚いて大量のプリントをぶちまけてしまった。
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