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奏は腑に落ちないと言った表情で悔しげに時計を見上げる。幸いにも残り数分でチャイムが鳴り響くだろう。
ほっと溜め息を漏らした瞬間、目前の景色にノイズが走った。
「え!?」
奏が驚きの声を漏らすのと、チャイムが鳴り響くのが同時で奏の声はチャイムに掻き消される。
「今日はここまでだな。黒板ちゃんと消しておけよー」
「ふぁい。じゃ、消すよー」
男性教諭の言葉を聞いた日直がヤル気のない返事を上げて、溜め息混じりに立ち上がって黒板に書かれた文字を消していった。
「奏、何して注意されたの?」
教室の入口付近からショートヘアの少女が近付いてくると奏は自分の机にへたれこむ。
「聞いてよ、深古都(みこと)ぉ。お腹空いたって呟いたら高根(たかね)クンに笑われたのー」
「えー……僕のせいですか?」
頬を膨らませて軽く睨んでくる奏に対し、隣の席の少年――高根 花(はな)は困った表情を浮かべながら次の授業の準備を始めた。
「花くんは悪くないからダイジョブよー。ってか奏、今日はカラオケ行く?」
ショートヘアの少女――楢舘深古都(ならだてみやこ)が奏の額をデコピンしながら、スマホを構える。
「ふぇ、知らない人が来るなら行かないよー」
「奏とセッティングしてって言われたから予定立てたのにこれだもんなぁ」
デコピンされた額を擦りながら奏が首を振ると、深古都は深い溜め息を漏らした。
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