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「きりーつ、れい。ちゃくせきー」
先程の日直がヤル気のない声を上げると、その声を合図に全員が立ち上がり女性教諭に向けて頭を下げる。バラバラに着席すると、女性教諭は教科書を開いた。
「前回指したのは音無さんね。とりあえず黒板に解答書いてー」
女性教諭が長い黒髪を耳にかけながら言うと、奏は立ち上がって黒板まで歩くと花に借りたルーズリーフを手に解答を書いていく。白いチョークを置いた瞬間に、眼前にノイズが走って断片的に映像が過った。
「え……?」
奏は突然の事に思わずその場に座り込んでしまう。
「音無さん、どうしたの? 具合悪い?」
「あ、いや……大丈夫です」
心配そうに女性教諭が奏の顔を覗き込むと、教室がざわつき始めた。
「顔色悪いから、保健室いった方がいいかも。女のコの保健委員は?」
「今日は、風邪で休みです」
女性教諭の問いに生徒の内の一人が答える。
「じゃあ、男の子の保健委員は?」
「あ、僕です」
「高根くんか……高根くん、保健室までついていって上げて」
女性教諭の言葉に花が手を上げると、何の迷いもなく花を指名した。
「立てますか?」
「ごめん。ありがと」
花が立ち上がって、奏のところまで来ると手を差し出す。奏は頭を抱えつつも、手をとって立ち上がった。
「よろしくね、高根くん」
「あ、はい」
花は笑顔で答えると奏の腕を引っ張って教室を後にする。
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