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「とまれええええ!!!!!」
目の前に壁が迫ってきている。ラクノスはさらに足に力をいれる。
『アグニッションブースト発動!』
影の意思によりラクノスの両腕が前へと向き、逆噴射がおきた。スピードは急激に落ち、ラクノスの体は止まった。
「と、止まった…」
『危ないとこだったな。』
ラクノスの体から影が出てきた。
「元はと言えばお前のせいだろうが!?」
『そう怒るな。まぁついてこい。』
そう言いながら影はダンジョンの深部へと向かった。
「なんなんだよあいつ…」
ラクノスは不満を抱きながらもついていった。
「ここって…」
ダンジョンの最深部へとたどりついたラクノスは驚きを隠せなかった。
目の前に広がっているのは大きな湖、それは前にも来ているから分かることだが驚いたのはそこではない。幾重にもかかっている魔法陣の存在だった。
「前に来た時にはこんなのなかったぞ?」
『だろうな。なんせ俺が目覚めていなかったからな。』
「目覚める?」
『あぁ、湖の底をよく見てみろ。』
ラクノスは湖の底を覗きこんだ。湖の底にはなにか黒いものが見える。シルエットからして犬だろうか?
『さて、ここからがお前に頼みたいことだ。』
影はそう言うと湖の中へと入っていった。
「おい?」
ラクノスはなにをしていいのか分からないまま突っ立っていた。
『さあ、湖の底に向かって≪ソウル・デザイト≫を放て!』
「はあ!?」
少ししてから聞こえた影の声にラクノスは馬鹿なのかと思った。
「やったってなにも起きないぞ!?」
『いいから放て!』
「知らないからな!!!」
いつもより大きく魔法陣を組み立てる。そして自分がダンジョンに入ってからここまで自分で歩いてきたことに気づいた。
(なんで魔法が使えるようになってんだ?)
考えても分からないため、ラクノスは考えることをやめた。
「≪ソウル・デザイト≫!!!!」
湖の中に浮かび上がる多数の魔法陣から白い刃が現れ、底の黒いシルエットに刺さる。
『うおおおおお!!!!』
黒い影の声が聞こえたと思ったその瞬間、幾重にもかかっていた魔法陣が壊れ始めた。
「な、なにが起きたんだ!?」
湖の中では電気が走り、全ての魔法陣が壊れた。
「…どうなってるんだ?」
「やっと出れたぜ…」
湖の中から現れたのは一匹の黒い狼だった。
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