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「え?狼?」
「礼を言うぞ、ここから出してくれたのだからな。」
黒い影は消えていて、狼の口からは影と同じ声が発せられていた。狼の体はヒョウのように大きく電気を帯びており、左目元には十字架の傷があった。
「なんでこんなところにお前いたんだ?」
「話したいのは山々だが、まずここを出よう。」
「はぁ?なん…って、そういうことかよ…」
狼との会話を止め周囲を見渡すと、どこから現れたのか分からない兵士達の姿があった。目視で確認できる範囲で、およそ30体。全員武装しているわけではないが格好だけでサーバントと判断できる。しかも、ほとんどが戦闘士とガーディアン、魔法師であるラクノスにとっては戦いづらい敵であった。
(広域魔法を使うか?いや、発動までの時間が足りない。なら…)
「おい狼、名前は?」
「カルマだ。お前は?」
「ラクノス・ヴィルだ。」
「ヴィル?ほう…」
「どうした?俺の名前がおかしいのか?」
「いや、なんでもない。それよりどうする気だ?」
「カルマは下がっていろ、俺がどうにかする。」
「ほう、分かった。少し見学しようではないか。」
カルマは少しニヤッとしてから、ラクノスと距離をとった。カルマが離れたのを確認すると、ラクノスはフードをかぶり、杖を地面へと突き刺した。それが合図のように兵士達はラクノスへと攻撃を仕掛けた。
「決める時は一瞬!!≪ソウル・デザイト≫!!」
地面からの攻撃を受け、兵士達の足が止まる。
「ふぅ、やったか…」
「馬鹿者!!回避しろ!!」
「え…グハァ!!!」
カルマの声は届かず、ラクノスは戦闘士の攻撃を受けてしまった。精神攻撃魔法を受けたはずの兵士達はラクノスへと足を進めていた。
「な…んで…」
「キシァァァアア!!!」
「≪ディア・ボルト≫!!」
倒れているラクノスにとどめを刺そうとしたガーディアンを黄色い剛球が襲った。ガーディアンの体は砕け散り、砂と化した。ラクノスの盾になるようにカルマが立ちはだかり、兵士達と対立する。
「俺を目覚めさせれるのは精神攻撃魔法を使える者だけなのだ。つまり、俺らを排除しようとするこいつらプログラムに精神攻撃魔法は効かないんだよ。」
「それを…早く言えよ…」
「フン、自信満々に言うものだから任せてみたものの、期待した俺がバカだったよ。」
「プログラムって?」
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