1人が本棚に入れています
本棚に追加
「プルルルルルッ。」
携帯の受話器からは応答がない。
かけ直そうかと思ったとき、相手の声が聞こえた。
『…もしもし?』
「シルレアか?今どこに…」
『遅ーーーーーい!!!』
受話器からは割れんばかりのシルレアの怒った声が響いた。
「何分待たせれば気が済むのよ!?」
「いや!勝手にお前が行ったんだろ!?」
「…またか。」
シルレアとの会話をしているラクノスを見てアンディはため息をつきながら空を見上げた。
隣にいるラクノスは電話相手であるシルレアとの口ゲンカを始めている。
ラクノスとシルレアは幼少の頃からの付き合いだがアンディは中等部からの付き合いになる。現在高等2年だからおよそ5年の時間一緒に過ごしてきたがこのケンカは相変わらずだ。
「…んで、どこにいるんだよ?」
毎回恒例の口ゲンカは今日はラクノスが降参をして話を戻した。
「東地下ダンジョンの入り口付近よ…」
電話ごしだがシルレアの声が少し涙声になっていることに気付き、ラクノスはまたやってしまったと後悔していた。
「東地下ダンジョンか…今から行くと30分かかるけどいいか?」
「…今どこよ?」
「寮前。」
シルレアのため息が聞こえラクノスもため息をつきそうになった。
「分かったわ、待ってるから早めに…」
シルレアが言い終わらないうちになにか物音が受話器から聞こえた。
「シルレア?どうした?」
「ちょっと!あなたたち一体なにを!」
「おい!シルレア!」
「ブツッ!プープー。」
「おい、どうした?」
突然切れた携帯を握りしめている自分に話しかけるアンディの声を無視してラクノスは走り出した。
「おい!待てって!」
続けてアンディも後を追いかけた。
「なにがあった?」
「シルレアが誰かにさらわれた。」
走りながら聞いてきたアンディに対してラクノスは大まかに内容を伝えた。
「なら敵は東地下ダンジョンの中だな。」
「あぁ。ダンジョンで叩き潰してやる!」
「だな。そうと決まれば急ごう!」
「おう!」
そう返事をするとともに走る足にラクノスは力を込めた。
(…ほう、魔導師とガーディアンのコンビか…あの魔導師は気になるな。後を追うか…)
突然、二人の走り去った場所から黒い影のようなものが現れ、後を追っていった。
最初のコメントを投稿しよう!