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ふーこは、仏壇の母の遺骨の前に座っていた。
すぐ近くにまで来ていたマルちゃんに、再び声をかけられるまで、気がつかなかった。
マルちゃんに気づいて振り向いたふーこの頬には涙の跡が光った。
ふーこは慌てて、涙を拭い
「マルちゃん…
ごめんなさい。急に母が亡くなってコンサートせっかく誘ってくれたのに…行けなくて…。」
と、微笑んだ。
「もういい、ふーこさん、そんなにひとりで頑張るなよ!
俺に気を使うな、つらい時は泣けばいい、無理して笑うなよ…
ふーこさん‼」
マルちゃんは、そう言ってふーこを抱きしめた。
小さなふーこの身体はマルちゃんの腕の中で小刻みに震えだした。
そして、堰を切ったように涙が溢れ声をつまらせながら号泣した。
しばらくふーこの号泣は止まらなかった。
マルちゃんは、黙ってふーこを抱きしめ続けた。
…私はずっと待っていたのかもしれない…
ひとり、強がって肩肘張って生きてきた。
だけど、愛しい人の腕の中で何もかも委ねたいと
広いマルちゃんの腕の中ふーこは初めて、自分の気持ちに正直になれたのかもしれない。
マルちゃんの愛を今、身体一杯に感じていた。
泣き止んだふーこは、自然とマルちゃんの顔を見上げた。
見上げたふーこの顔に自然とマルちゃんの顔が近づく。
ふたりの唇は重なった。
もうふたりの感情を止めることはできなかった。
何度も、何度も激しく唇を奪い合った。
唇を離して、マルちゃんは両手でふーこの頬を挟み
「ずっとふーこさんの優しさに守られて、悪い道に落ちないで済んだ。
だから、今度は俺が守る
ふーこ!」
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