第三十話

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「ああっ!!もう、じれったいなぁ!! 照彦が決めないなら、手始めに一人殺そ♪♪」 依子が、癇癪を起こした子供みたく金切り声で叫び、猟奇的な笑みを浮かべる。 「や、やめろ…待て!!」 まさかの突然の犯行声明に俺は肝臓が縮み上がる。 「うふふふーのタラララ?♪」 依子は果物ナイフのような物を取り出すと鞘から抜き、刃の露わになったそれを利手に持ち横たわるスク水着刑事の元へと颯爽と駆け出した。 「待てと言っているだろう依子おぉぉぉぉぉぉ!!!」 俺は叫ぶ。 「待たないよ!!もう、待て無い!! 私には照彦が立派な探偵になる為にまだまだ実行する幸福がたくさん有るんだからっ!!!」 瞳から涙をボロボロと零し、依子が俺に口答えする。 感情の爆発。 言ってる事も、やってる事も、もう訳が解らない。 「いっぱい、いっぱい殺すんだもん! 照彦が探偵で、 あたしがお嫁さんなんだもん…。」 依子は泣く。 泣く。 「…そうか。」 極限状態に有った。 俺も沸騰しそうな頭をフル回転させ、思考のドン詰まりの中、ある一つの記憶が蘇った。 「依子…分かった。 全て、分かったよ。」
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