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第2話【ベリフェメールの魔女】
劣悪なる自然の猛威を前に
人はあまりにも無力であった。
高地より吹き下ろされる乾燥した空気は
さながら神獣ドラゴンの吐き出す息吹の如くあらゆる植物を枯れさせただろう。
そしてその風は、こう言っているようでもあった。
人よ
その痩せ衰えた皺だらけの手の中に
もしもひと粒の甘い果実とひと掬いの水とがあったなら
目の前で消えゆこうとしている数多の生命(いのち)の
その期限を掌握しているとは言えやしまいか。
だが
救いの手を差し伸べられる生命はひとつだけ。
他人を見捨て
己が生命に明日を与えるか
或いは
この先に待ち受けているであろう絶望的現実世界に
誰ぞ一人遺して己れは天へと召されるか。
否、そのどちらでもないのかも知れない。
それでも我は託すしかないのだ。
こうして未曾有の危機を乗り越えてきた
この大陸に住まうすべての者に
未来を切り開くだけの叡智が授からんことを。
だからこそ選ぶのだ。
この飢餓の中にあって
それに相応しき人物となり得る者を。
【風の神獣ドラグーンエルメスの呟き】
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