第壱話 けぶる街とジャンク商会

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まあ、たらふく酒を喰らって帰って きたのだから、部屋で眠りこけて いるのだろう。 会長に関してもそうだ、仕事をしな いとか、昔は英雄だったとか、その 他諸々、気にしてはいけない。 この会社に普通は通用しない。 そう考えれば、僕も随分と、この会 社に慣れたものだと思う。 食べ終わった食器を片付けて流し台に置く、センちゃんはそのままでよいと言ってくれるが、さすがにそれは心苦しい。 本当なら自分の食器くらい自分で洗いたいのだけれど、センちゃんが頑として譲らないので使用がない。 ごちそうさま。 そう、声をかけて、僕は事務所の上の階にある自室に向かう。 シトロさんのモーターサイクル屋と、ジャンク商会の事務所以外、このビルには入居者はいない。 小さなビルとはいえ、五階建ての建物。 人の気配のしない閑散とした雰囲気はどこか薄ら寒いものがある。 僕の部屋は三階の角で、センちゃんとスズマルさんが同じ階の部屋を使っている。 お風呂や炊事場、トイレなどは二階にしかないので、生活の基本は二階になる。 故に一応あてがわれた自室といえども、あまり部屋にいることはないのだが。 ちなみに、四階はシトロさんが、最上階は会長が使っている。
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