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ごろんごろんと転がりながら、それでも何かを僕に叫ぶ少女、あっけにとられた僕の顔面にも、ふにっと柔らかい物が覆いかぶさる。
なんだこれ?
毛むくじゃらの、獣臭い。
……。
「にゃあ」僕の顔に乗った獣は 、しっかりと僕の顔面に爪を立て、間抜けな鳴き声を上げて飛翔する。
思わず尻もちをついた僕はそのまま仰向けに倒れた「ひらり」と言うには聊か不格好な体で地面に降り立つマン丸。
余りに見事なその恰幅に、狸かと思ったが、どうやらそれは丸々太った猫らしかった。
したたかに後頭部を打ち付けた僕が、くらくらとする頭をふるいながら起き上れば、騒動はまだ続いているらしい。
少女は、まだごろんごろんと転がっていた。
まっ白で長い髪、エプロンドレスが翻り、下着がチラリと見えた「あ、ラッキー」などと思う間もなく、僕の顔面に再びふにっと柔らかい物が押しつけられる。
「巡士隊ならこのぐらい簡単にかわしなさいよ」幼馴染が見ていたならきっと、これ以上無いくらい眉間に皺をよせて。こういわれていたことだろう、なんだか、聞こえてきそうだ。
僕はもう一度、後頭部を強く打ちつけて、そのまま気を失った。
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