第零話 拝啓、肥溜めより。

2/2
前へ
/77ページ
次へ
ーーこの世界はでっかい糞だ 我が愛すべき、ジャンク商会、会長、テオ・ドールは言った。 世界とは、肥溜めに過ぎないと。 故に、今から十数年前起こった反乱。人間復興の聖戦を、 彼はウジ虫がおこした反乱と言って憚らない。 ハエが支配する世界で、ウジ虫どもが反乱をおこしたのだ、と。 結果はどうか? 皆が知る通り、支配者は変わった。 会長の言葉を借りるならば、ハエに代わって世界はウジ虫に支配されるようになったということだ。 ならば、そのウジ虫はどうなったか? 会長は自嘲気味に笑った。 「糞くらって、ハエになったのさ」 聖戦と呼ばれた戦い。 人が人として生きるための戦い。 人間復興を旗印に、多くの血が流れ、人はその尊厳を取り戻した。 世界は様変わりした。 沢山の屍を踏み台として、世界は変化した。 ……ように見えた、多くの人にとっては。 だけれども。 にもかかわらず。 だから故。 その戦いを勝利に導いた英雄は言うのだ「何も変わりゃしねー、相変わらず、糞の上にはハエが飛んでやがる」と。 忌々しげにそういうのだ。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加