第壱話 けぶる街とジャンク商会

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遮蔽物の多い、下層にはあまり本物の太陽の光は届かない、それでも、朝のうちは建物の間に間から、わずかばかりの日が差す。 僕はふうっと息を吐きだし空を見上げる。 はるか上方に見える下二層。 人工太陽がいくつか光っていて、そのうちの一つは壊れていた。 上三層でそんなことはあり得ないが、下三層では良くあることだ。 修理されるにしたって、いつになることか分かったものではない。 そもそも、修理されることなどあるのだろうか? 僕が、ここに来て以来、ずっと壊れたままにされているような気がする。 もっとも、住人達は気にも留めていないようだが。 ……僕がここにきて。 僕がここにきて、もう一月もたつ。 いつになったら本隊復帰できるのだろうか? いや、そもそも、復帰できるのか? 様々な疑問が頭をよぎるけれど、今は、与えられた仕事を的確にこなすしかない。 そう、仕事、具体的には牛乳配達と新聞配達と、各種、商店の手伝い。 犬の散歩だとか、猫探し。 あとは……事務所で来るか来ないか分からない仕事をまつという仕事。 考えれば、考えるほど僕の気持ちは沈んでいく。 治安維持と人々の平和な暮らしの為、七生報国。粉骨砕身。政府と人々につくすという僕の本来の目的は何一つ達成されていない。 何故に、こんなことになったのか。 不幸な事故が重なりに重なった結果である。などと、のたまえばミコト大佐にぶん殴られることだろう。 けれども、あの日あの時、あの場所で反政府組織なんかに出会わなければ、そして、幼馴染の口車になどやすやすと乗らなければ、僕は或いはこんな場所には居なかったのではないだろうか。 過ぎたことを悔やんでも仕方がないのは分かっているが、それでも、そうであったとしても、悔やまれるのだから仕方がない。 まあ、後悔はしていても、僕の。僕らの行動がまちがっていたとは一つも思わないのだけれど。
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