俺の嘘と本音

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俺は会社の飲み会に同期と二人で向かっていた。 会社の合併に伴い新規立ち上げが決まったプロジェクトの参加メンバーでする懇親会。 俺たちA社メンバーだけでなく合併先のB社の人と顔合わせも兼ねている。 隣で俺と肩を並べて歩く雪村は、いつもよりさらにテンションが高めで、『B社にかわいい女の子いるといいね』なんてぬかしている。 会場に着くと、いきなり凄く周りに見られた。 雪村といるとき一層目立つのは自分でもわかっていた。 俺たちは俗に言う美形らしい。 ため息をつき、隣の雪村を見た。 雪村は髪を明るく染めて小麦色に焼いた肌をしていたら、いかにも夏の海にいそうな雰囲気の派手な印象の男だった。 太陽の下でにっこり笑い白い歯を出している様子が容易に想像できる。 体もでかく俺より身長も高い。多分185cmはある。いかにも健康優良児だ。 俺はそれに対して、少しウエーブのかかった長めの黒髪で、いかにも夏は好きではありませんといった色白。がたいも雪村ほどはよくない。 すなわち俺らは対照的な雰囲気なのだと思う。 お互いそこそこ顔も整っているので、会社なんかでは常に比べられ、どっちが好みかという女性陣のくだらない会話の的となった。 「お!かわいい子いるじゃん!うちの社はレベル高いけどB社の子もなかなか…あの子とかよくない?」 そう言って雪村が指す先には、長めのウェーブがかった髪を一つにまとめた、いかにも仕事の出来そうな女がいた。 顔は色白で薄化粧。派手な印象は受けなかったし服装も仕事着なのかシンプルなシャツとパンツだった。確かに控えめで大人っぽい、バランスのいい美しさがある。 興味のなかった俺は女性の少ない席に決まることを祈り、あらかじめ決められていた座席表を確認した。 すると後ろから、一つ下の後輩である碓氷が俺たち二人に声をかけてきた。 「お二人とも目立ってますねー!いきなり雪村さんは女の子見てたんですか?懲りないっすね。」 笑っているこいつも相当目立つと気づいているのだろうか。 三人ではよく飲みに行く。 その時が俺は一番気遣いもなく楽しめるのだが、逆に周りからの目は見世物のようで、時折たまらなく息が詰まる。
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