俺の嘘と本音

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碓氷も雪村と同じく、明るい爽やかな好青年風だった。 しかしこいつの場合性格と反して、見た目は無害そうな甘い顔なので幼い印象を受ける。 やはりキャラはかぶらないので、女性陣は増えたレパートリーに喜ぶばかりだ。 「お!碓氷じゃん!そーなんだよ、あの子とか良いなって話してた。」 「え―どの子っすか?あー!え、立花?雪村さんあいつですよ、いつも俺とつるんでる同期。よく話題に出るでしょ?」 へぇ、と思いもう一度その立花さんとやらに目を向ける。 確かに碓氷の口からよく立花さんの名前は聞いていた。 同期でライバルで優秀な女。 男みたいに気を遣わなくて、二人でしょっちゅう飲みに行くと。 別にそれだけでは記憶に残らなかったと思うが、いつも面白い奴なんだと嬉しそうに語る碓氷が印象的で、少しだけ頭の隅に残っていた。 「へー立花さんてあの子なんだー。可愛くて面白いなんて最高じゃん。席近くにならんかな~」 そう雪村が言った。 しかし実際に席が近くなったのはなぜか俺と雪村で、『何で懇親会なのに隣がお前なんだ!』と雪村はぶつくさ言っていた。 雪村には悪いが俺にとっては上々で、変に気を遣わなくても良いし、女が来ても良く喋る雪村に丸なげしたらいいと考えていた。 飲み会は始まると各自の席なんてあってないようなもので、移動して色々な人と話す雰囲気になっていた。 とはいっても、案の定、俺と雪村の席には女が喋りにひっきりなしに来ていたので、上司とのあいさつ以外は移動する事もなく、そのままお酒ばかり飲んで雪村に丸なげしていた。 正直性格としては最悪だと思うが、わざわざ俺たちのところにチャンスを伺ってくる女は好きじゃない。 それは雪村も実は一緒だ。 料理にもあまり手をつけずサラダなんかの草ばかり食っているがりがりな女や、お酒もあまり飲めないと言って俺たちの周りにい続ける女は、雪村にとってはその場限り。 俺にとっては面倒な案件以外の何物でもなかった。 俺は見た目草食、中身肉食のこういった女が一番苦手だった。
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