俺の嘘と本音

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今までの女は二人きりのデートだと思っていたものが、予想に反してそうでなかった時、もしくはそうでなくなった時に、俺に気があればいかにもがっかりするか機嫌を悪くした。 俺は別に立花さんに悪気があったわけではないが、後々考えると試すようなことをしたと思う。 メールではまるで二人の誘いの様にふるまった。 当日の飲み会までに、どこかから情報が漏れる可能性は勿論あった。 本気で騙そうとか思ったわけではなくて、からかえるものならからかって、反応を見て遊びたかっただけ。 碓氷に慣れているなら、ちょっとやそっとじゃ怒ったりわめいたりもしないだろう。 それに別に『二人で』と俺が明言したわけではないので、『言ってなかったけ?』と逃げる事も可能だった。 最低だが、ただ俺は集合場所での反応を見てみたかっただけだ。 碓氷のお気に入りの、面白い女が、今までの女と同じ反応をするのか、それとも…。 そう思うといたずら心がくすぐられた。 実際に集合場所に来た立花さんは、以前の飲み会で見た時より女らしい格好をしていた。 (あらら、やっぱり期待させちゃったかな?) そう思ったが、こちらに気付いた後も特に表情を変えることなく女性陣と楽しそうに話していた。 (あれ。何だ、やっぱり碓氷が喋っちゃったかな。) その後目があっても別に怒っているそぶりもない。 あまりに普通の対応に面白くなかった俺は少しばかり不機嫌だった。 (向こうが不機嫌になるならわかるけど、何で仕掛けた俺が拗ねてるんだよ。) 店に着くと、そこで立花さんの表情が初めて変わった。 独り言で小さく『なんで?』とつぶやく。 (本当に知らなかったのか…? それでさっきのあの反応。面白いような、面白くないような。) ひとまず作戦は成功していた事が分かって俺の機嫌は直り、唯一ついたウソを繕った。
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