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 タツオの眠りは浅かった。    昼だが日ざしのささないジャングルのなか、必死で駆けていく。理由も正体もわからない敵から追われる苦しい夢だった。同じ班の仲間とははぐれしまったようだ。タツオは孤独だ。濡れた葉をかきわけ、転げるように斜面をおりていく。なんとかして進駐官養成高校にもどらなければいけない。そこで大切ななにかがタツオを待っている。  一発の銃声がジャングルの動きを止めた。鳥や獣(けもの)の鳴き声が消え、完全な静寂が訪れる。こんなに障害物が多い場所で当たるはずがない。ゆっくりと伏(ふ)せようとしたところに、衝撃が襲った。防弾ベストの背中に着弾する。  続いて第二波の狙撃が始まった。今度は正面からだ。二発、三発、四発。この音は大口径のライフル銃による狙撃だ。タツオは大地に打ち倒され、もう自分は死んだのだと思った。着弾するたびに身体が釣りあげた魚のように跳(は)ねる。
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