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「危ない、タツオ」
目の前で特殊警棒が光の弧(こ)を描いて、振りおろされてくる。襲撃者の目が充血しているのもわかった。タツオの意識が透明になり、すべての感覚が解放された。あの時間がやってきたのだ。止まってしまった時間のなかで、自分だけが動いているように感じられる奇妙な時間。なにをすればいいのか、ゆっくりと考える余裕さえあった。
タツオは一歩前に踏みだし、敵の懐(ふところ)に入りこんだ。ひざを沈め、特殊警棒ごと敵の腕をつかむ。まるでアニメのようだった。振りおろす勢いがついた相手は2メートルも夜の木々のなかに飛んでいく。葉の鳴る音は嵐のようだ。
暗闇のなか人が駆けてくる足音が響いた。
「だいじょうぶか、第一班」
スリランだった。外地人の第7班がタツオたちの窮地(きゅうち)に気づき、駆けつけてくれたのだ。敵は浮き足だった。怪我(けが)をして動けない2人を抱え、林の奥に敗走していく。
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