14

4/7
前へ
/14ページ
次へ
「危ない、タツオ」  目の前で特殊警棒が光の弧(こ)を描いて、振りおろされてくる。襲撃者の目が充血しているのもわかった。タツオの意識が透明になり、すべての感覚が解放された。あの時間がやってきたのだ。止まってしまった時間のなかで、自分だけが動いているように感じられる奇妙な時間。なにをすればいいのか、ゆっくりと考える余裕さえあった。  タツオは一歩前に踏みだし、敵の懐(ふところ)に入りこんだ。ひざを沈め、特殊警棒ごと敵の腕をつかむ。まるでアニメのようだった。振りおろす勢いがついた相手は2メートルも夜の木々のなかに飛んでいく。葉の鳴る音は嵐のようだ。  暗闇のなか人が駆けてくる足音が響いた。 「だいじょうぶか、第一班」  スリランだった。外地人の第7班がタツオたちの窮地(きゅうち)に気づき、駆けつけてくれたのだ。敵は浮き足だった。怪我(けが)をして動けない2人を抱え、林の奥に敗走していく。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

415人が本棚に入れています
本棚に追加