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 手を伸ばし防弾ベストの胸を探った。銃弾は炭素繊維に止められている。おかしい。このベストの効果は小口径の自動小銃までのはずだった。狙撃銃に無効のはずだった。口径7ミリのマグナム弾には耐えられないと、授業でちゃんと習った。  ベストに刺さった弾を手にとった。目のまえにかかげる。銃弾ではなく、紫色のちいさな巻貝だった。顔をあげて胸元を見ると、びっしりとウルルクコムラサキガイが埋め尽くしている。ちいさな巻貝は生きているように濡れ光っていた。  撃たれたというより、自分の身体(からだ)から生(は)えだしたようだ。恐怖のあまり、タツオは絶叫した。薄暗いジャングルのなか、悲鳴は誰にも届かない。横たわるタツオには、嵐の空のように暗い密林の天井(てんじょう)が見えるだけだ。 「起きろ、タツオ。点呼だ」
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