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「わかってるよ。おまえみたいな体力馬鹿(ばか)には30キロくらい、なんでもないんだろ」  カイとの腕相撲を思いだした。テルは底知れないスタミナをもっている。タツオも模擬銃をとった。実銃と同じ重さで、重量バランスまで完全に再現してある。どこかで教官が怒鳴(どな)っていた。 「銃を地面につけていいのは銃床だけだ。腕立て伏せ30回!」  4キロ弱の重さはたいしたことがないように思えるかもしれない。だが、これが6時間の行軍の間にずしりと効(き)いてくるのだ。軍事進駐官なら行軍をこなせる体力も必要だろうが、タツオが希望する文化進駐官には無用の訓練だった。腹立たしいし、嫌になる。だいたい真夜中にたたき起こされて、行軍することにどんな意味があるのだろう。  リーダーのジョージが涼(すず)しい顔でいった。 「さあ、出発しよう」  4人は一列になって、東島(とうとう)進駐官養成高校の正門をくぐった。
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