木菟

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石山ナルミ様――、 そう書かれた手紙を受けとったのが、一月ほど前の事だ。 同じ大学の、写真科の友達数人と、飲み会で別れたあと、私は一人アパートの部屋にたどり着く。 お酒は得意じゃない。 私は部屋のドアを閉めると、その場にしゃがみ込んだ。 気持ち悪い…吐きそう。 たかがビール一杯と、水割りのウィスキーを少し飲んだ程度でこれだ。 でも、この悪酔いの原因は他にもある。 同期の友達の作品が、わりと有名な雑誌で賞をとった。 2ヶ月ほどキューバに行くと言って撮影してきた写真。 たいした写真じゃない。 でも、雑誌での評価は予想以上に高かった。 私や他の友人達は、賞賛するどころか、嫉妬した。 「あの子のうち、お金持ちだから。カメラ機材だって、いいのばかり持ってるし。」 もちろん、機材がいいからって、いい写真が撮れるわけじゃない。 でも、彼女の才能を、誰も認めたくなかった。 自分たちを凡人だと認めることになるから。
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