8人が本棚に入れています
本棚に追加
石山ナルミ様――、
そう書かれた手紙を受けとったのが、一月ほど前の事だ。
同じ大学の、写真科の友達数人と、飲み会で別れたあと、私は一人アパートの部屋にたどり着く。
お酒は得意じゃない。
私は部屋のドアを閉めると、その場にしゃがみ込んだ。
気持ち悪い…吐きそう。
たかがビール一杯と、水割りのウィスキーを少し飲んだ程度でこれだ。
でも、この悪酔いの原因は他にもある。
同期の友達の作品が、わりと有名な雑誌で賞をとった。
2ヶ月ほどキューバに行くと言って撮影してきた写真。
たいした写真じゃない。
でも、雑誌での評価は予想以上に高かった。
私や他の友人達は、賞賛するどころか、嫉妬した。
「あの子のうち、お金持ちだから。カメラ機材だって、いいのばかり持ってるし。」
もちろん、機材がいいからって、いい写真が撮れるわけじゃない。
でも、彼女の才能を、誰も認めたくなかった。
自分たちを凡人だと認めることになるから。
最初のコメントを投稿しよう!