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「…ねぇ?」
ずっと黙っていた、三神さんが重い口を開く。
「ちょうどいいわ。ここにいる五人。私はこの中の誰かが怪しいと思うんだけど。…例えば、結城さん。貴方は完全にアリバイがないわよね?それに、カトリーヌの第一発見者だわ。」
私達は一斉に彼を見る。
「…動機は?」
病弱そうな少年は、少しも動じる風がない。
「僕には彼女を殺す理由がない。」
…そう。
私達は、皆ほとんど初対面なのだ。
結城さんとカトリーヌさんなんて、口をきいたこともないんじゃないか?
「動機、ですって?」
三神さんはさらに突っ込む。
「では聞くけど。…貴方は、どうしてここへ来たの?高校生よね?私は最初から不自然だと思ってた。」
「答える義務はない。…あんたは警察じゃないでしょう?」
二人の間に、目に見えない火花のようなものが散った。
「…僕は、生まれつき身体が弱い。ここには療養で来てる。…うるさいのは嫌いだから、部屋に閉じ籠っているだけだ。…これでいいかい?」
そう言い捨てて、食堂を出ようとする少年の背中に、三神さんは言った。
「…最近の男の子は、女装をするのね。いや、どっちかしら?…私はそういうのに興味ないけどね。」
一瞬、結城さんの動きが止まる。
しかし、彼は乱暴にドアを閉めると、行ってしまった。
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