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長く、静かな夜が始まった。
あたしは欠伸を噛み殺しながら、三神が持ってきてくれた毛布にくるまっていた。
虫の声に、今が夏であることを思い出す。
こんな事件さえ起きなけりゃ、いい休暇だった。
いや、こんな事件が起きると予測していたからこそ、三神に会うことが出来たとも言える。
三神静の居所は、すでに奴等にバレていたのだ。
彼女の住むマンションの近くに、ツアーの広告ポスターを張りつけ、そこを毎日通る、三神の潜在意識に刷り込ませる。
夏休みという解放感が、彼女をいつにない行動に走らせ、まんまとこの洋館に誘いこんだのだ。
あたしは組織にこの事を報告し、自分もツアーに参加する許可を得た。
芦原も言っていたが、この洋館は人気が高いらしく、組織の担当者も予約を取り付けるのに、苦労したと言っていた。
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