土竜

3/4
前へ
/47ページ
次へ
ふと、人の気配を感じたが、誰もいない。 まさかと思うが、バラバラ事件の被害者の幽霊か? あたしは、意外とその手の話はダメなんだよなあ…そう思って、毛布の前をかきあわせた。 「あれ…?」 小さな影が廊下に映し出される。 「どうしたの?」 アトリエと反対側の角から、小さな頭がのぞいていた。 管理人さんの娘か。 こんな時間にどうしたんだろう? 「子供は寝る時間だろ?うろうろしてると、お化けに食われるぞ。」 くすり、と小さな笑い声。 「…パパが、持っていきなさいって。」 少女は恥ずかしそうに、湯気を立てたカップを差し出した。 「スープ?ありがと。」 あたしは笑顔でその可愛らしいマグカップを受けとった。 「…も1つお願いあるんだけど?」 少女が悲鳴をあげる前にあたしは彼女の身体から自由を奪い、その可愛らしい口を手で塞いだ。 「ん…んんっ…。」 「なめんなよ、餓鬼が。あたしは三神と違ってお優しくないからね。…どう考えても、テメエが一番怪しいだろ。」 少女はあたしをギロリと睨み付けた。 そこに、子供らしさなど皆無。 「そうそう、お願いってのはね、あんたのカードが欲しいんだよ。…持ってんだろ?」 膝を彼女の鳩尾に突き立てた。 カエルみたいな声をあげると、少女は大人しく頷いた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加