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それはそれとして、現在のモヒカン野郎に対する解決策の一つである銀華は霧の深い中の更に深いところを闇雲に駆けていた。
(術者がいるなら多かれ少なかれ気配や匂いがするもの……けど、それがない……)
視界が遮られている今、彼女の手がかりは自慢の鼻だけである。
聴覚に頼ろうかとも考えたが主人たちの戦闘音で役には立たないと判断した。
銀華は近くの一番高い木に登ると一旦考えをまとめ、落ち着く。
(これだけ見つからないなら……はなから存在しない?いや、あの男の風貌からあんな高等な術が使えるとも思えないし、何しろ単体なら既にご主人とヨモツで決着は着いている………)
しばしの黙考の後、次に取る行動を決める。
「あっ……そっか」
そうつぶやく頃には既に動いていた。
銀華は今まで『森』の中において異質な存在を嗅ぎ分け用としていた。
それがそもそも違っていた。漫画や小説によくある手口ではある、『不自然なまでに森と同化』しているものには意識が向かなかったのだ。
一つのものに固執するという思考が妖怪らしいといえばそうなのだが、今回は反省すべきだなと銀華は落ち込みながらその森らしい雰囲気を発する場所に走った。
あたりは相変わらずの霧である。方向や場所や認識でさえ狂ってしまいそうなどんより鉛の霧の中で彼女は口角をにんまりと上げた。
「みぃつけた」
視線の先には全身フジツボにまみれた奇妙な人型の何かがブツブツと唱えていた。
そのフジツボ人間がはっと銀華に気づき視線を向けた時にはもう時遅し。
その身と喉元には銀華の直剣が数本貫き身を裂いていた。
それと同時に遠くの方で銃声と鶏を絞め殺したような断末魔が響いた。
「ふぅ………なかなかの相手だった……」
そうして銀華はまた霧の中に消えてゆくのであった。
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