霧の町

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そしてその後、フヒト達が屍と戦っていた6時間前くらいに蜃の中に突入したのである。 蜃の被害にあった地域周辺は完全に外界からシャットアウトされていた。 今回、蜃の内部に侵入したのも軍用の歩兵戦闘車両に乗せられて着いたのである。 政府としては無闇に怪異絡みで自衛隊を出すわけにもいかず、それ専用の軍事会社である【闇人】という傭兵を裏で雇っているのである。 今回も闇人は蜃の周りを取り囲み、外から他の怪異や人間が紛れ込むのを防ぐ仕事を任されている。 蜃により食われたといえ、蜃は口を開けており視覚的にはまだその土地はあるように見える。 だが、そこに迷い込んでしまうのは非常に危険であるため、わざわざ軍隊紛いの傭兵を雇っているのだ。 場面は現在に戻り、フヒト達が霧の中で迷っているところである。 「なぁ、ヨモツさん周りに生きた人間を感知できないかな?銀華も鼻は効かないのか?」 『ご主人すまない……この霧は相当厄介、と言うか死臭しかしない』 困り顔の二人を微笑みながらヨモツはいつも通り不敵な笑み浮かべる。 「ふふん、私なら可能よ、こんな子供騙しの霧に囚われやしないわぁ~取り敢えずコッチよフヒトさん」 と、ヨモツはフヨフヨと浮きながらフヒトを先導して行った。 今まで道路沿いに進んでいたのだが、ヨモツの示す道は正に獣道だった。 藪や木々、泥にまみれ、相変わらず霧に包まれていた。 (ヨモツさんがいなけりゃ発狂しそうな環境だ) 額に汗を垂らしながらフヒトは進む、途中に蜃の中にもともと住み着いている怪異供と交戦しながらそれでも山路を進んで行った。
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