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「――母さん、お風呂上がったよ」
あの母娘が帰り、数十分後。
時刻はとうに午前3時を過ぎていた。
「あら、早かったのね」
横たわる父の前に座っていた母が振り返る。
ほんの少しだけ、目が赤く腫れているように見えた。
「母さんもそろそろ入ろうかしら」
母はそう言いながらも視線を父に戻す。
私は何も言わず母の隣に腰を下ろした。
母が動く気配は無い。
「…不思議ねぇ。 お父さん、眠ってるだけのように見えるわ。
朝になって、肩を揺すれば起きるんじゃないかって」
「父さんそんなに寝起き良くなかったでしょ。
ちゃんと目覚まし時計鳴らして、大声出して起こさなきゃ」
「ふふっ…そうね。
折角起きても "あと5分…"ってまた寝ちゃうしね」
「それでいつも電車の時間ギリギリになるんだよね。
…そうそう、それで1回 私の授業参観遅れて来た事があった」
「あぁ! 母さん入院してて行けなかった時ね。
お見舞いに来た時、貴女怒ってたわね。
"折角お仕事休んだのに、寝てたら意味無いじゃない"って」
「それは怒るでしょ、楽しみにしてたんだもん。
でもその日の夜ご飯、私の大好きな物ばかり作ってくれたからすぐ許しちゃった」
「ふふふ…単純な子ねぇ」
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