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他愛ない会話に、父との思い出が甦る。
嬉しかった事悲しかった事、時には喧嘩した事さえ愛しい思い出に感じた。
母との会話は、まるで悪口のようだったけれど。
「――こんな悪く言ってたら、怒って起きちゃうんじゃないかしら」
「いや、父さんの事だから泣きながら起きるかもよ」
2人でそう笑いながら、父の顔を見る。
本当に穏やかで、本当に安らかで。
本当に、起きてしまいそうで。
「…なんで起きないの、父さん」
いつも騒がしい父が、ただただ静かに眠っている光景に腹が立った。
「…馬鹿みたいに寝てないで、いつもみたいに怒ってよ。
いつもみたいに騒いでよ。
それで、一緒に大声出して、喧嘩して、
最後に"秋穂 大好きだよ"って笑って抱きしめてよ…!!」
気付けば顔中腫れるんじゃないかってくらいに涙を流していた。
泣き止む気配なんて無い。
私は眠っている父にすがり付く。
後ろで母が鼻を啜っている音が聞こえた。
「どうして死んだのぉ…っ!!
私よりもあの女の子の方が大事だったのぉ…っ!?」
もちろん、そんな事は思ってない。
でも、言わずにはいられない。
「父さんなんか…っ、父さんなんか…っ!!」
こんな悲しい思いをさせる父なんか、
世界で1番、
いや 宇宙で1番、
"大好き"
―― だいきらい だ。
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