《私は父が嫌いだ。》

7/12
前へ
/14ページ
次へ
  静かな仏間に 時計の秒針の音だけが響く。 ちょうどその針は午前2時を差した。 「宇沼さん、少しお休みになって下さい。 お線香は私たちが見ておりますので」 「…℃♀★§△※@」 何を言ってるのかよく分からない。 しかし、どうやら宇沼さんは母に促され、仮眠を取りに奥の部屋へ戻ったようだ。 広い仏間には母と私の2人。 すると、まだ幼い子供を背負った若い女性が訪ねてきた。 「随分遅い時間にすみません。 …どうしても、ご主人にお礼を申したくて参りました」 彼女は深々と頭を下げる。 背中の子はすやすやと寝息をたてていた。 「本当はもっと早く来たかったのですが…今日は遅番でして」 話を聞くと、彼女は大きな病院に勤める看護師らしい。 担当している患者のファイルを纏めていて、気付けば日を跨いでいた、と。 すると、彼女は急にバッと勢いよく頭を下げた。 「この度は大変申し訳ありませんでした!!!」 彼女の突然の行動に私たちは目を丸くして驚いた。 母が必死に顔を上げるよう促すが、彼女は一寸たりとも動かない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加