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【ねぇスミノフ。ホントにこの死体にするの?】
シンプルながら豪華な漆黒のドレスに身を包んだ彼女、否、彼の右手に握られた白き機関銃から、少年のような高く愛らしい声が発せられる。
漆黒のドレスに、可愛くリボンが結わえられた銀色の髪は、よく映える。
だが、彼を纏う部屋は、彼を纏うには余りにも、この部屋は無機質すぎた。
机と本が並んでいない本棚とテレビと、埃を被った写真のない写真立てだけ。
「当たり前だよ!まさか死んだばかりの新鮮な死体がすぐ見つかるなんてラッキー。きかん坊は身体を持ったら何したいー?」
年齢は十三歳といったところだろうか。機関銃を持つその姿は凛々しくもあり、同時に幼さも感じさせる。
部屋をくるくると回転し観察しながら、空虚な部屋だなと彼は思う。
【んーとね、スミノフから逃げて新しいご主人見つけるー】
「なんで!?」
和やかに会話しているが、彼等の前には頭部から血を流し絶命している少年の死体が横たわっている。血の着いた空の瓶が転がっている状況から察するに、殺されたであろうことが覗える。
スミノフと呼ばれた少年は、殺害された死体を怖がる様子もなく、血に塗れることも厭わずに死体を弄る(まさぐる)。
「死因はこの傷じゃない?毒でも……ない?え?どゆこと?」
【スミノフ、この死体やめようよ。なんか変な感じがする」
「でもさ、こんな新鮮な死体が見つかるとは限らないし、使わせてもらおうよ。殺されたままの方が可哀想だって」
【そうかなぁ】
「そうだって。じゃ、そうと決まれば儀式と行こう!逃げないようにボクの血を混ぜてね!」
【えぇ!?】
きかん坊という名の機関銃の意見など一切気にも止めず、指を噛み血を流し、死体の血も用い複雑怪奇な魔方陣を描いていく。
数分後、死体の手にきかん坊を握らせ、魔方陣は完成する。
「よし!それじゃ、転送開始!」
なんとも簡単な詠唱を唱え、魔方陣がその声に応え、青白く光り輝く。血を用いた魔方陣は逆再生するかのように死体の頭部に戻り始め……
【……え?ス、スミノフ、おかしいよ!ぼくの知識が吸い取られてる!】
「そ、そんなこと言われても!ボクは何もしてないのに!」
【スミノフが分からないでどうすんのさ!このポンコツ野朗!】
「野朗って言うな!」
口論している間にも血は死体に戻り続け、最後には血が流さていた痕跡など跡形もなくなった。
そして、死体は目を覚ます。
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