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「……へ?覚えてないの!?なんで!?まさかテンダラーの影響?」
名前を覚えてない。そう言っただけで僕の手を握ったまま一人であたふたし出した。名前くらいでそんなに動揺しなくてもいいだろうに。
名前がなければ不便なだけで、別に名前なんかなくても困りはしないのに。名前なんてただ個人を識別するためだけの記号じゃないか。
「テンダラー?」
話を僕の名前から変えるために訊いてみる。
「テンダラーはお兄さんにかけた魔法の名前だよ。死体に別の自我を定着させるための魔法なんだよ。極稀にお兄さんみたいに身体の持ち主の自我が目覚める時があるけど、名前を失わせるなんてことないはずなのに」
こいつがそう言うならそうなんだろう。だって僕の嘘だから。嘘なんて吐く必要はどこにもない。だけど、何故か教えたらいけないような気がした。だから嘘を吐いた。
【じゃあさ、名前を思い出すまで死ぃちゃんって呼ぼうよ。死体の死ぃちゃん】
……なんてネーミングセンスのなさだ。きかん坊も酷いけど、死ぃちゃんも酷い。持ち主のネーミングセンスのなさが機関銃にさえ影響するのか。
「お、いいねぇ!死ぃちゃん、死ぃちゃん。うん、死ぃちゃんっていい!」
「死ぃちゃんでもなんでもいいから、この状況を説明してくれ。僕は死んだはずだ。なのに、なんで生きてる?」
「うん、気になるよね。説明するから、コーラ飲ませて」
いつの間に押入れにストックしてたコーラゼロの山を見たんだ。とりあえず、蹴っておいた。
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