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「ふぅん……このきかん坊とやらの身体にするために、僕の身体に目をつけたと。で、よく分からんまま失敗して、きかん坊の自我は定着するどころか僕の自我が目覚めたと。で、僕は生き返った訳じゃなく、あくまで身体は死んだままだと」
スミノフとコーラを浴びるようの飲みながら、僕が蘇った理由を聴く。
「後ね、死ぃちゃんの身体は死んだままだから、普通の死体と同じように腐敗していっちゃうんだよ」
「………………はっ?」
腐敗していく?蘇らせたくせにか?
「何もしないでいるとだけどね。身体が腐る前に、新鮮なDNAを取り込んで腐敗していくのを防ぐんだよ」
「まさか、人間を食べるんじゃないだろうな……?」
「いやいや、ボクはそんなことしないよ。魔法で蘇った身体だから、魔物のDNAでも適応して腐敗を防げるんだよ」
「……魔物?」
「…?うん、魔物。魔法少女の敵と言ったら、魔物で決まりでしょ?」
あっさりと清々しい笑顔で言いやがった。まさか、僕に魔物と戦えとか言うんじゃないだろうな。さっきまで普通の人間だった僕に戦えとか言うんじゃないだろうな?いや、こいつならありえそうだ。十分あり得る。
「今すぐ僕をただの死体に戻せ!戦えとか真っ平ゴメンだ!」
「え、やだ。確かにきかん坊は定着しなかったけど、死ぃちゃんにはきかん坊の知識が取り込まれてるんだもん。死ぃちゃんはもうボクの立派な戦力だよ。だから、死なせてやんないもん」
なんだかブチブチと血管が切れる音がする。半殺しにしてもいいかな?いいよな?
【ねぇ、死ぃちゃん】
今まで声を上げなかったきかん坊が、僕に声をかけてきた。
「…なんだ?」
【なんでさ、そんなに冷静なの?】
「……なん、でって…」
別に冷静振ってる訳じゃない。ただ驚きはしても、それだけだ。妹に殺されたのに、死体のまま蘇らされたのに、なんの感情も湧いてこない。哀しみとか怒りとか、湧いてきていいはずなのに。怒りも哀しみも、上っ面を飾るだけだ。
【普通ならもっと泣いたりぼく達を責めたりするのに、死ぃちゃんは平気そうな顔してるよね。殺されたことさえ、どうでもいいような顔してる。ねぇ、死ぃちゃんは誰に殺されたの?】
「……………誰だろうな。記憶と一緒に感情も、どこかに置いてきたのかもな」
記憶も感情もどこかに置いてきた。その言葉が妙にしっくりきたのは何故だろう。
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