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きかん坊、か。鋭いな。機関銃なのに。
「とりあえずきかん坊の知識って、きかん坊を扱う知識ってことか?」
なんとなく、机の上に置いてるきかん坊に視線を移す。
「死ぃちゃんは飲み込みが早いねぇ!つまりはそういうこと。それとね、身体能力が大幅に強化されて、どんな傷もすぐ治っちゃうし痛みを感じなくなってるはずだよ」
痛みがない。つまりは痛覚が存在しない。戦いの上に置いて、痛覚は邪魔ということか。
「例えば、このきかん坊で僕自身の頭を撃ち抜いたらどうなる?」
「してもいいけど、血が飛び散るだけだよ?死ぃちゃんの身体を完璧に葬りたいんなら、テンダラーを解くか、ダイナマイトとかで吹っ飛ばした後に灰さえ残さないように焼き尽くすしかないよ?」
……僕にろくな二度目の死は訪れなさそうだな。
まぁでも、頭を撃ち抜いても本当に死なないのか痛みを感じないのか、試してみないと僕の気が治まらない。だからきかん坊を手に取り、機関銃だから銃身が長いためにリボルバーみたいにこめかみを撃ち抜けないから、銃口を咥えて引き金を引く。
きかん坊が気を使ったのか、音がないまま弾丸が発射され、僕の後頭部が吹っ飛ばされたのが分かった。反動できかん坊を持ったまま後ろに倒れる。血の味が口の中いっぱいに広がって、鉄の匂いが鼻腔を刺激する。
髪が広がる血で塗れてほんの少し気持ち悪い。それよりも傷が塞がっていくのが分かる。十五秒もしないうちに完璧に塞がったのを感じて、上半身を起こして後頭部の傷を確かめる。髪は血でぐっしょり塗れてるけど、傷は跡形もない。
あーあ、これで痛みを感じなければ自殺出来ないことは証明された訳だ。そして悪戯に部屋を真っ赤に汚しただけ。
「思ったんだけどさ、ここ死ぃちゃんの家な訳じゃん?名前思い出せなくても、書いてる物くらいあるでしょ?」
……そうだった。ここ僕の家だった。
【スミノフが珍しくまともな冴えてること言ってる!】
「珍しくってどういうことだよ!とりあえず、光熱費の紙とか保険証とか名前を書いてる物探そうよ」
嗚呼、せっかく嘘吐いたのに無駄になった……。
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