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…………ヒー……ちゃん……?
そこはこの病院に数室しかない
特等室だった。
そこに辿り着くまでのやけに長い廊下の隅々に、
その病気の要素を何となく感じる。
そしてその角部屋をノックをする
寸前、広田は私を振り向いてこう言った。
「……兄貴……
白血病なんだ。
家族や親戚全部調べたけど、
骨髄移植のドナー不適合で、
今は誰か適合する相手の、
順番待ち……」
驚かなかった。
そう思うにはこの長い廊下で十分だったし、
ある程度は想像……出来たから。
コクンと頷くと、その扉を広田が開ける。
そこから響くやけに明るい広田の声と、
ドアの上にある
【虹橋 凌駕(ニジハシ リョウガ)】
の名札、
それからあの……
ヒーちゃん……?
って言う、低く優しい声。
トクトクと、動き出す鼓動。
それは家族以外、
呼ばない私のあだ名だから。
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