第8話

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ミナは私がそう言うと涙を拭い、 恨めしそうな顔で私を見た。 「…………あなたよ。 あなたが悪いの、安野さん」 「……私……? 私先輩に何かしましたっけ? ……あ、もしかして痴漢、おおぴらっにして欲しくなかったとか?」 人と言うものは思わぬ所で恨みをかうものだ。 「……え、違います? なら何だろう……なぁ田中っ、お前も考えろよっ」 「……うるさいわねぇ。 私にわかるわけないでしょう?」 そんな事を続けていると、 ふいにミナが笑い出した。 「……あんた達バカじゃない? それにあんた、 あんたよ安野 光っ、 全く気づかない訳? 日向君はあんたが好きなのよ。 この可愛すぎる私をふるほど、 あんたみたいな腐れ女をねっ」 そう言ってひとしきり ゲラゲラ笑うと、 また恨めしそうな顔になり ミナは涙目で私を見た。 「……私、日向君の彼女じゃないわ。 そうなる前にふられたの。 あんたがジロジロ見てたあの日、 告白したら 好きなやつがいるって即ふられたのよ」 「……え……でも先輩あの時すごく嬉しそうに……だからてっきり」 「ええそうね。 プライドが許さなかったの。 待っていた友達にふられたって言いたくなかったわ。 だからあんな風にしてた。 この私がふられる? しかも理由があんただなんて耐えられない」 田中桃を見ると完全に固まっている……。 私も……固まりたい。 けれどこのミナを放置する訳にもいかない。 「……でもそれ……私だってハッキリあいつ……言ったんですか?」 「……言ってない」 「……じゃあ何で」
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