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私立虹橋(ニジハシ)学園は、
偏差値も高め、
制服もかわいいと言う事で、
公立に行くつもりだった私に
昴兄と響兄が勧めた。
女の子はやっぱ私立でしょ、
とか言って。
でも少し考えれば分かったはずだ。
こんな私に私立が似合う訳がない。
仕事が多忙な昴兄より、
響兄と大半を過ごす。
それはオオカミに育てられた少年と一緒で、響兄の言葉が私の言葉になった。
でも私がこんななのはそのせいだけではない。
2人が私の為に必死で働いているのに、
ちゃらちゃらオシャレなどしていられない。
私が男みたいだったら、
2人にそんなには心配をかけない。
そんな想いが膨らんで、
いつの間にかそうなった。
『次は~学園前~学園前~』
アナウンスに顔を上げる。
……とその時ふと気づいた。
ドア付近に立っている、
同じ制服の上級生。
……あ……れ、痴漢だよな。
その後ろに立つ銀色コートのテカテカ親父。
上級生は気づいているようで、
逃げ場の無い隙間で汗をぬぐう。
電車が駅で停まると、
まだ降りない親父の腕を通りすがりにむんずと掴んだ。
「……な、なんだっ!?」
「降りろよテメー。
さっきケツ触ってたろっ……!」
そのまま引っ張り駅のホームへ。
さっきの上級生は……と言うと、
騒ぎになるのが嫌だったのか、
そそくさと改札へ逃げて行った。
ぷしゅーと閉まるドア。
……やっちまったなぁ……。
「……お嬢ちゃん、
いつ誰がどこで君のお尻を触ったのかね!?」
ニンマリする親父……。
気づいた駅員がやって来て、
私と親父を交互に見た。
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