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「ちょっとみんな見た~!?
安野さん、今日痴漢されたの~!」
教室に入るともうニュースだ。
……そう言えばあの時
同じクラスの何人か、いたかも。
田中 桃(タナカ モモ)は
大きなリボンのポニーテールで、
私の席にやって来た。
「おっはよ、安野さん。
朝から大変だったねっ」
……こいつには悪意がある。
隣の席に広田 日向が座ると、
それはまた、むき出しに。
「無視しないでよぅ。
ああ言うの、女の敵じゃん」
「……あれは私が触られたんじゃねーし。
ごめん、もういい?」
見上げると見えたのは、
グロスまみれの尖った唇。
次の一手をすぐ思い付いたのか、
それはニッコリ笑った。
「だよねー。
あ、ごめんねっ、別に深い意味はないの。
ほら安野さんってすごくボーイッシュじゃん?
だからまさかなーとは思ってたんだけど。
やっぱそうなんだ。
あの叔父さんも冤罪だ~とか何とか騒いでたもんね」
……全部見てたって事。
もういい?
それを繰り返そうとすると、
広田 日向がいきなり喋った。
「ボーイッシュね。
物は言い様だな。
つまりはこいつが男みたいだから
触られる訳ないって、ハッキリ言えば?」
広田にそう言われると、
途端に田中 桃の頬が紅く染まった。
「やだぁ~。そんなのぜんっぜん思ってないし。
日向君の意地悪」
「意地悪じゃねーし。
事実だろ?
安野がトランクス履いてるって、
田中おまえ、前に言ってたじゃん」
ギクリとする。
噂になってるのは知ってたが、
発生源はこいつか……。
でもほんと、
何で男に生まれなかったのかって思う。
何が悲しくて女はあんな小さなパンツを履くのか理解出来ないし、
ブラジャーも然り、だ。
バレンタインとやらも、
鬱陶しいし、
手作りを強制するような
あのグッズたちが並ぶ季節は、
貰う側に回りたい。
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