言えないキス

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至極真っ当な解答を口にした。彼女の言うとおりなのはよく分かってるけど、胸の奥がモヤモヤと気持ち悪い。 それがアルコールのせいなのか、自分の気持ちだけの問題なのかも分からないけど。 「ねえ、リョウ」 「ん?」 「リョウは彼女に『今朝はレオと挨拶した』なんて事まで報告するの?」 「……しない、ね」 「『ホストファミリーのパパとママと、その家族全員と挨拶してハグした』って毎日言うの?」 「言わないかな」 「なら、今夜の事だって黙ってればいいのよ。言わない優しさってあると思う」 そう言って立ち上がるとガムを大きく膨らませるシェリー。 その風船がパンっと割れて、シェリーはそのガムをそのまま吐き捨てた。 「それとも、サリーとのキスに感じちゃった?」 「……何を?」 聞き返し見上げる凌にシェリーは「何か、よ」と、繰り返す。けれど、意味が分からないから、「何かって?」ともう一度聞くと、呆れるように溜め息をついた。 「彼女とキスしたとき、感じる何かと同じものよ」 そこまで言われて思い出してみる。 彼女とのキス。 甘かったりしょっぱかったり。 それだけじゃなくて、もっと欲しくなるような、何か――。 だけど、サリーとのキスは本当に唇にが触れただけで、柔らかさ以外何も感じない。だから、 「ない、かな……? キスって気付くまでに3秒くらいかかちゃったくらいだし」 と素直に答えると、シェリーは「あははっ! なにそれ!」と吹き出すように笑った。
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