言えないキス

18/37
前へ
/37ページ
次へ
貰った飲み物を口に運ぶ。 ほんのり苦くて、シュワシュワと喉に刺激を与え胃に滑り落ちていく。 「リョウ! 珍しいわね、ダーツでもやらない?」 「あら、プールの方が楽しいわよ、ね?」 珍しい来客者に話したこともない女の子達が集まってくる。 「人気者ね、リョウ」 そんな声に振り返れば見覚えのある彼女。だからといって名前すら思い出せないけど、 「日本人が珍しいからじゃない?」 凌はそう言ってニコリと笑った。 のに、 「私の誘いは断ったくせに」 目の前の彼女は不機嫌を全面に押し出すから凌は「ん?」と首を傾けた。 ブロンドに碧眼、チェリーピンクの肉厚な唇。 思い出したのは、 「あぁ、シェリーか」 「……ちょっと、どこ見て思い出してるのよ」 豊満な胸が見えたから。 「サリーがよくて私がダメな理由、教えてくれる?」 その胸を張り迫る彼女に凌は動じることもなく「違うよ」と返した。 「違うって何がっ」 「サリーも、君も好きだよ、シェリー」 ニコリと爽やかな笑顔でそんなことを言うから、シェリーも言葉を詰まらせた。 「この綺麗な髪も柔らかい肌も、少し甲高い声も、女の子はみんな可愛くて、僕は好きだよ」 「……」 多分、最低なことを言ってるはずなのに、彼の笑顔にその声に勘違いしそうになる。 「その胸も触れたくなるくらい素敵だし、その唇だって――」 つーっと唇を撫でる指先に感じたのか、シェリーの身体が微かに震えた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1560人が本棚に入れています
本棚に追加