言えないキス

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「え? もう先輩帰っちゃったんだ!」 そんな真由美の声を聞きながら「う ん」とシャーペンをカチカチ鳴らす。 「ってか見送りは?」 「いらないって」 「やっ、だって今度はいつ帰ってくる の?」 「さあ?」 「さあ? って! ちょっ、美穂!!」 叫ぶ真由美に美穂は薄く笑う。 「だって受験生だもの。これで大学落 ちたらそれこそダメだし」 「そう、だけど……」 「ほら、先生来るよ!」 窓の外からは煩いほどの蝉の声。 太陽はジリジリと地面を照りつける。 「まだ、夏なんだよね」 「なんか言った?」 真由美の声に「何でもない」と答えて 美穂は頬杖をついた。 見上げる空に飛行機雲が見える。 もしかしたら、なんて思いながらそっとまぶたを閉じた。
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