言えないキス

23/37
前へ
/37ページ
次へ
一度酔いを自覚してしまうと見える景色だって歪んでしまう。 だから、その場にストンと座ると「おいおい」とレオの声が降ってきた。 「もしかして初めてか?」 そんな質問には素直に「うん」と頷く。 「アメリカではもうアルコールって飲めるの?」 「21からな」 ニカッと笑うレオに凌は「あれ?」と首を傾げる。 「僕、まだ18なんだけど」 「奇遇だな、俺もだ」 「だよね」 きょとんとする凌にレオは「ははっ」と笑う。 「アルコールに関してはかなり厳しいからな。IDないと買えないしバーにも入ることは出来ない。だからこうして親のいない家に入り込んで、ってことになるわけだ」 そんな説明に「なるほど」と頷いて壁に背中を預けた。 「ってかマジで酔ってんのか? もう無理っぽいなら送ってくれそうな奴探してやるけど?」 見上げると余計でも景色がぐるんと回る。こんな状態なんて初めてで、 「うん、帰った方がいいかも」 そう言って緩い笑みを作った。 その笑顔に固まるレオ。そして、 「……あんま笑顔振りまくな」 「ん?」 「そうでない奴でも勘違いするぞ?」 レオはそう忠告すると、 「大人しく待ってろ」 と凌を置き去りにして人の集まっている方へ歩いていった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1560人が本棚に入れています
本棚に追加